小学生の頃、家の裏の用水路でタモロコ釣りから始まった僕の釣りは、四十を過ぎてヘルメットとウエットスーツを着てヒラスズキを追う日々になった。
タモロコ釣りに話を戻そう。
始めた頃、玉ウキでポツポツと釣っていた。そこへベテラン風のお爺さんがやってきて、トウガラシウキとベニサシでタモロコや婚姻色の入ったオイカワを隣でバンバン釣っていたのを目にしたのが衝撃的だった。
あの虹色の雄のオイカワが釣りたくて、釣りたくて毎日暗くなるまで水路に立っていた日々は忘れもしない。
その当時は釣りの情報網と言えば本で、休みになれば市立図書館の釣り本コーナーで読んだ事ない釣り本を読み漁った。
時代は変わり、高校になると僕は投げ釣りに夢中になった。社会人の先輩に連れられて伊豆や三浦に足を運び、空撮本やネット掲示板で情報を集めて自分なりに解釈して、未開の釣り場で誰も釣ってない魚を狙ってた。
何が楽しかったか。
情報が溢れていなかったから自分の足や知識、経験を積み重ねていって得られた1匹の釣果が何ものにも変え難い気持ちにさせてくれた。
それんな釣りが僕の原点であって、今もそれは芯にあると思う。
SNSや情報が普及して、釣り場や釣り方なんてめちゃくちゃ溢れてる。別に誰かの釣りを否定してるわけではない。
ただ、誰かの釣果を見てしまえば「それより大きな魚を釣りたい」と思ってしまう事もあるだろう。
仕事や家庭、その時々で釣りを優先できない時だってある、クローゼットの奥で埃が被った釣竿だってあるだろう。けど、そんな時間は1匹の魚にまた出会えれば消えてしまう。
水辺は、魚は変わらずそこにいる。
自分の釣りは何だ?
自問自答して、見失って、時に釣りが楽しくなくなってしまう時もあるだろう。理解せずに自分の経験や気持ちのこもっていない製品を紹介するのはもってのほか。僕にはやっぱりできない。
だけど結局は魚と自分との知恵比べなんだから他人は関係ないんだ。
「True to your self」
大好きな釣りの先輩からもらった言葉。もっと自由に、看板や重圧に縛られない釣りをしよう。
そんな昔のことをふと思い出し、僕はまた釣り場へ帰る。