1匹の出会いを求めて(北海道遠征・幻の鱒編)

遠征釣行
利尻島の渓はとにかく薮を掻き分けながらの釣りとなった

N氏と共に遠征した北海道から早2ヶ月が経とうとしていた。帰りのフェリーの中で発覚した事が引っかかって記憶の奥底にそっとしまっておこうかと思った利尻島での出来事。今回はこのことを振り返ってみたいと思う。

「朱点なくね?」

利尻島でロックフィッシュや渓流探索を終え、稚内へ戻るフェリーで2人とも唖然とした。

日本では北海道にしかいないオショロコマ。北海道内の地域個体群の中でもポツンと離れた位置にある利尻島に、オショロコマがいると知ったのは、昨年の利尻島遠征の後だった。

お分かりいただけるだろうか?真ん中に川が流れている。ここをひたすら遡上していく釣り

利尻島は200万年前、海底火山の噴火でできた島。現在は火山活動は休止しているが、山全体の侵食が激しく沢の数は多いものの、上流部では火山岩の下に水が染み込んでいてほぼ川の水は見当たらない。湧水が湧きでるのは海に注ぐ直前の河口付近の細い流れのみ。

Geographicaで利尻島を見ると沢が多そうに見えるが、砂防堰堤で土砂に埋まっていたり、ほとんど涸沢になっている。

極め付けは土石流対策の為川のほとんどが砂防堰堤で途切れ途切れに寸断されてしまっているのだ。遡上するシロザケやカラフトマスもわずかな流れ込みに入ってくるのみだとか。

藪漕ぎの代償。タックルがどうとか関係ない。魚のいるところを見つけることの方がここでは重要だ。

N氏と上陸してからも、GoogleマップやGeographicaでの沢探しを続け数本の沢に絞って入渓した。入渓と言ってもエントリーは河口部の3面護岸から僕らの背丈を越えたラワンブキを掻き分けて水を探す。一つ目の淵と言うには小さすぎるバスタブのような水溜りで交代でルアーを打つとN氏が掛ける。

「真っ赤なイワナ、、、こ、これは?」

そう思うやいなや、魚はバスタブに戻っていった。

魚はいる。今のがオショロコマだったのかアメマスだったのかは容易に答えが出たが、2人ともそこは口を噤む。N氏はやっちまった感いっぱいの表情だったが、こればっかりは仕方のないこと。

「この沢上がる?行けると思う?」

僕は言った。

「地図上だとあと数100mは行けるはず。行きましょう」

大きな堰堤。ここでNが先行を僕に譲ってくれた。Hoppinjohn40sを堰堤下の蛇籠に入れる。流量がないので、ダートも小刻みにゆっくりと。そして、岩陰からルアーをひったくる小さな影。

30cmのネット枠からすると10cmくらいの小さな魚

これが夢にまで見たオショロコマ!?2人とと興奮と感動が溢れ出てくる。

通常、北海道の河川でオショロコマがいる環境はアメマスが下流側にいてその上流域にオショロコマがいる事が多いそう。ただこのオショロコマが釣れた地点は河口から数100mの地点。環境的要因なのか、ほとんど涸沢と言っても過言では無い川で細々と命のバトンを繋げていたのであった。

朱点がない事でオショロコマでは無いのでは?と封印していた魚。後日知人から「オショロコマですよー」の言葉に気持ちが落ち着いた

ただ、オショロコマであろうが、無かろうがはもうどうでも良くて、1匹の魚との出会いが大の大人の心を踊らせるのだから凄いこと。

僕は釣りが上手い訳でもない。写真や動画が綺麗に撮れる訳でもないけど、この大切な釣行の記録を残す事が何より大事だと思い、今回執筆することにした。

釣りはロマンである。誰かに価値観を左右されるものでもない。今の世の中、全てが分かりやすくて便利だ。

だけど、本来あるべき「分からない点と点を繋げる」余白の部分は自分の目と手でで確かめたい。今回の利尻島でのオショロコマとの出会いは紛れもなく僕らの余白を「体験」として埋めた。

少しずつだけど、こんな事を細々と書き続けていきたいと思った心に残る釣行だった。

/// Tackle Data ///

Rod:【SMITHS】TRMK-423UL

Reel:【SHIMANO】18ステラC2000HGS

Line: 【VARIVAS】doublecross×8 0.6号

Leader:【VARIVAS】 BIG TROUT SHOCK LEADER 8lb(2号)

Lure: 【UNFOLD】Hoppinjohn40s T1

タイトルとURLをコピーしました